浮き足立つ

浮き足立つ

「宗教は?」と、もし聞かれても「無信教だ。」とか「実家は一応、浄土宗だけど別に。」とか答える人が多いように感じる。仏教や神道の信者がほぼ全員を占める日本だけどその当事者は自覚していない。正月には初詣、2月にはバレンタイン、10月はハロウィン、12月はクリスマスといろんな国のいろんな文化を頂戴して、自分が積極的に参加するかは別だが、楽しませてもらっている。そろそろ節分の季節だから恵方巻きをとかお盆だから帰省の準備をとか季節を感じることのできるひリマインダーのような要素を含んだものとして機能していると思う。季節のイベントや自分含めた周りの誕生日や何かが近づいてくるという想像しやすい近い未来のワクワクすることに僕はすぐに浮き足立ってしまうのかもしれない。

 正月の伊勢神宮に行った。一生に一度は伊勢参りというらしい。古事記にも歴史にも詳しくない自分はなんとなく本殿まで向かってお賽銭をして頭を下げた。話は変わるけどお賽銭は投げないようにしている。どこかで読んだ記事でお賽銭は神様への御供物なので投げずにそっと置くように賽銭箱に入れましょうと書いてあった。言われてみれば確かにそうだ。食べ物でもなげるなと言われるのに神様に対する御供物を投げるなんて禁忌だ。そういうこともあって、賽銭箱に向かってご縁がありますようにと5円玉をぶん投げている人を尻目に僕はふんわりと1円玉を入れている。書いていて気づいたけどそういう人を尻目に見ていることも神様にはお見通しかと思うと思うと得も言われぬ気持ちになった。

 伊勢神宮には正しい周り方なるものがある。外宮に参拝してその後に内宮という順序だ。御多分に漏れずそういう順番で回った。内宮と外宮の距離が歩いて行くにはなかなかの時間がかかる。正月のこの時期は臨時で外宮と内宮の間をバスが絶え間なく走っていた。外宮を回った後に内宮行きのバスのために30分くらい長蛇の列に並んだ。長蛇の列には2種類あると思う。空港の手荷物預けみたいに時間に間に合うかどうかという人を孕んでいる長蛇の列は殺気だっているが、USJなどのテーマパークのアトラクションの列のように近い将来の楽しみを待っているものは楽しげな空気が流れている。今回の内宮行きのバスは後者のものだった。時と場合でその行列に流れる雰囲気は全く違うものになる。その日は寒い日で外での30分待ちだったけど正月だし、家族に会えるし、今年は何しようかなと漠然と楽しいことを企んでいる僕の足は浮き足立っていた。

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